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社長ブログ

創業4周年。ガンガン行こう!

2025年2月1日、経営をし始めて4年が経過した。

No Silver Bullet. ー 銀の弾丸などない。

ブルックス(Frederick Phillips Brooks, Jr. (米)ソフトウェア技術者、計算機科学者)のNo Silver Bullet - essence and accidents of software engineering(『銀の弾などない— ソフトウェアエンジニアリングの本質と偶有的事項』)から引用する。

"There is no single development, in either technology or management technique, which by itself promises even one order-of-magnitude improvement within a decade in productivity, in reliability, in simplicity."

技術や管理手法のいずれにおいても、それ単独で生産性、信頼性、あるいは単純さにおいて10倍の改善を約束するような開発は、10年の間に出現することはない。

彼は、本書の中で「ソフトウェア開発には本質的な課題が存在し、その課題を一瞬で解決してしまうような技術は現れないだろう」と語っている。

そして、その通りだった。

彼が書いたように、10年、いや、この論文が1986年に書かれてからほんの最近まで、銀の弾丸は生まれなかった。

今から5年前、当時大企業にいた僕は、通っていたMBAスクールで新規事業立ち上げの難しさに課題を感じ、エンジニアに転身し、この課題に挑戦しようと調査を始めていた。そんなときに、何気なく、この論文を読み流した。起業のための知識集めの中の、ほんの数十分の話だ。

しかし、この日から、僕は何度もこの一節を思い出すことになる。それは、その後、実際に、この長らく解決しない課題の理由の深さを、目の当たりにし、悪戦苦闘することになるからである。

失敗を許さない日本の文化、英語ベースで入力が必要なプログラミングや出力されるエラー文章、それが故のエンジニア不足、日本の雇用制度の問題、開発業界の請負体質…どの角度から見ても、日本で新規事業がうまく立ち上がらない合理的理由が存在するのだ。日本はさまざまな面で素晴らしい国だと思うが、新規事業を立ち上げる土壌としては、最悪なのかもしれない...とさえ思ったこともあった。

そうして、起業のアイディアがまとまらないまま、1年が経ったある時、画面に映るgpt-2(後のChatGPT)の出力を見つめながら、深いため息をついた。

画面には、たった数行のプロンプトから生成された完璧なコードが並んでいたからだ。バグも無く、可読性も高い。僕たちが何日もかけて書いていた(ような)ものが、数秒で出来上がっていたのだ。もちろん、当時は、まだまだ使い物にならなかった。なぜなら、実行環境や周辺モジュールとの生合成が取れていない、”理想論の単一スクリプト”だったからだ。それは、ただのおもちゃだった。

しかし、同時に、先程の文章に続く、同書のこの一文が頭をよぎったのも事実だった。

"There is no royal road, but there is a road."

(王道はない。しかし、道はある。)

この論文には続きがある。再度、同書から引用しよう。

"This point is not to deny that great progress has been made in improving productivity, reliability, and simplicity. Nor is it to deny that many more promising techniques will be discovered and advanced. But we must expect to see these advances come by hard work over decades, not by some silver-bullet breakthrough. There is no royal road, but there is a road."

この主張は、生産性、信頼性、単純さを向上させる上で大きな進歩が成し遂げられてきたことを否定するものではない。また、今後さらに多くの有望な手法が発見され、発展することを否定するものでもない。これらの進歩は、何か一つの革新的な『銀の弾丸』による劇的な突破口ではなく、数十年にわたる地道な努力によってもたらされると考えなければならない。王道はない。しかし、道はある。

「きっと、世界の技術者は、その険しい道のりを、歩んできたのだ。」

そう思い、焦るようにMBAを取得し終えた僕は、人工知能科学専門の大学院に通い直し、自然言語処理を学びに行ったのを、昨日のことのように覚えている。ニューラルネットワークなどという、過去に評価もされなかったような機械学習の一つのモデルが、これから徐々に、しかし大きくイノベーションを起こしていくのだと。

その後、色々すったもんだしてBiz Freakを創業した。(ここの説明は、昨年のブログに委ねる。簡単にいえば、ぐるっと一周迷走しながら、戻ってきた感じだ。)

さて、あれから、4年が経った。AIは、この時の勢いを失うどころか、GPU性能やデータ量により指数関数的に成長し、遂に生成AIで真価を発揮する。従来人間がおこなってきたアウトプットの品質もスピードも、大幅に超えていったのだ。

また、同時に、ビジュアルプログラミング(昨今ではノーコード、ローコードなどの言葉の方が一般的だが、本書の言葉を用いる)はより抽象化され、汎用化されてきた。もはや、ビジュアルプログラミングツールの一つである「Bubble」を使って開発する技術者は、世界的に人気言語のPythonの半数以上にも及ぶのだそうだ。

銀の弾丸は存在しない。確かにその通りだった。しかし、数十年にわたる世界の技術者の地道な努力によって、僕たちは今、無数の小さな銀の粒子を手に入れている。それらは個々では完璧な解決策とはならないかもしれないが、組み合わさることで、かつて想像もできなかった可能性を生み出してくれる。

新規事業を始めた途端、時間は容赦なく進む。資金は日々減少し、成果を求める声は徐々に大きくなる。まだ形のない事業に対して、すでに結果を求められる矛盾の中で、不確実な未来へと歩を進めていく。この混沌としたカオスの中で、求められるソフトウェア開発とは、どのようなものなのだろう。

「全ては、基本の徹底にある。」

これは昔、僕がラグビーで習った言葉だが、スポーツも事業も一緒だと思う。

成長するために最も重要なのは、反復回数。そして、次に、失敗からどう学ぶか。逆にいえば、この2つのパラメータしかないと僕は考える。

新規事業も全く同じだ。顧客に対して何度仮説検証を行うか。失敗から、何度、どう学ぶか。この反復のプロセスを楽しもうが苦しもうが、どっちでも良い。反復こそ、全ての物事の成長要因なのだ。

例えば、AIだってそうだ。ディープラーニングの凄さは、連鎖律を組み立てた後に、最急降下法を用いて誤差を学習・修正するプロセスを、人間には到底実行不可能なほど反復する点にある。これを格好良く表現するために、反復回数を「イテレーション」と呼び、失敗からどう学ぶかを「パラメータ」と呼び、反復そのものを「バックプロパゲーション」と呼んでいるにすぎない。結局、ディープラーニングですら、「反復回数」と「失敗からの学び」でしかない。

しかし、このAIの進化を以てして尚、人は、未だに失敗に対してプレッシャーを感じ、躊躇し、悩む。そしてそれらは、一番大事な「反復回数」を下げてしまう。そんな中で、仮に結果が出たとしても、それは奇跡であって再現性はない。

新規事業を成長させたいなら、組織は失敗に対して許容する体制を整えるべきだし、当事者は顧客から目を離さずに仮説検証を、ただ、やり続けるべきなのだ。

当社の考えは極めてシンプルである。

開発をとにかく速く行う。

市場に早期にリリースし、とにかく速く改修と追加実装をし続ける。

データを見て方向性を決め、再度、開発をとにかく速く、これを繰り返すことで、市場への仮説検証の反復回数(バットを振る数)をとにかく上げる。三振してもバッターがアウトにならなければ、人はいつかホームランを打つのだ。

以上である。

その他の懸念は、後回しでよい。

敢えて言おう。当然然るべき努力はするが、その結果ソフトウェアに多少バグが出るのは仕方がないと、経営者の僕が割り切っている。ただ、その代わりに僕たちがコミットするのは、事業成長である。

事業を成長させるために必要な開発スピードと対応力、そしてリリースした後のデータ収集やヒアリングにより、成長の機会を見逃さずにすかさずピボットする。圧倒的に早く。そこに、限りないリスペクトとコミットメントを置いているのがBiz Freakである。

成長し続けること、事業のKPIを達成することが僕たちのミッションであるからこそ、ソフトウェアは改修され続ける。それを逆に言えば、100%完璧なシステム、は、僕たちが伴走している間において、存在しないことになる。

100%バグを出したくない、完璧で一切成長する必要のないシステムを期待するのであれば、莫大なバッファを含んだ予算と大量のドキュメントと共に、大手SIerとウォーターフォールでやることを是非お勧めする。

「多少悩みの種であるが、大した問題ではないときには、手をつけてはならない。」とピーター・ドラッカーが言っている通りなのだ。

そして、今はまだ、開発中心ではあるが、2025年は、徐々に、大きな岩を動かすような取り組みをしていきたい。メンバーには既に話しているが、そのための仕込みを昨年色々してきた。この開発の仕組みを作り、その仕組みをソフトウェアと文化に落とし、拡大可能にする。その後、とあるコミュニティのM&Aによって人を大きく増やし、この仕組み化されたノウハウとカルチャーを広げる。新規事業創造の場を作り、プロダクトを共創し、共創の中にコンパウンドモデルを構築していく。

まずは、新規事業の受託開発を、より大きくする。新規事業において、どういう開発を回したら事業が成長するかにおいては、もう入社して一年経過したメンバーなら、体感しているだろうから、ここでは割愛する。

そして、クライアントに許諾を受けた上で、その新規事業をバリューアップさせるような周辺ニーズにおける自社SaaSを実装し、一緒に育てる。これによって、本当のONE TEAMを創り出す。

さらに、エンジニア組織との統合により、イノベーションの場を拡張する。物理的な場を用意し、リアルな場とオンラインの双方で、この文化を広げる。

結果として、大手を振って、失敗から学ぶ人達と、コミュニケーションやバグに恐れない一方で事業成長に徹底的にこだわる開発者集団により、イノベーションを促進していく。

「誰もが今に熱狂する世界を創る。」

これが僕たちのビジョンだ。

さて。今から4年前、会社を創業した当時は、「真剣にこの課題に取り組もう。ダメだったらそれはそれでいい!」と思っていた。

それから4年。今は、この課題に向き合い続けてきた責任があると感じているし、何かがダメでも、そこから学び、解を導いていこうと考えている。それが僕たちがやってきたことだから。この市場を、ちゃんと変えていきたい。例え、自分の立場がどうなっても、きちんとこの仮説検証の結果を見届けていきたい。そんな感覚だ。仮説検証を繰り返し、この課題解決に向き合っていきたい。

きっと、危機感が創業当時よりも今の方が圧倒的に強いのは、もっと大きなものに向かって突き進んでいきたい思いが、僕の中に明確にあるからだろう。会社を起こして4年が経ち、人も大きく増えた一方で、登る山の山頂がより高く、しかしはっきりとしてきた感じだ。もっと大きなROIの中で、物事を考えていきたい。山頂は高く、そのプロセスにおいて、魔法のような飛び道具がないことも、ちゃんと分かってきた。

でも、先ほど記載したように、僕たちは今、無数の小さな銀の粒子を手に入れている。それらは個々では完璧な解決策とはならないかもしれないが、組み合わさることで、かつて想像もできなかった可能性を生み出してくれる。そのプロセスには、確かに銀の弾丸は存在しなかったのだが、山頂に達した結果、組織として、新規事業における銀の弾丸でありたいと考えている。

これが無謀な挑戦なのか、変革者であるかは、常に今日の1日にかかっている。必ずしも進む日だけではないだろう、戻ったり迷う日もある。ただ、毎日、そこにいる人間が、重圧のなかで、ベクトルを自分に向けて、一つずつ、必死に積み重ねていくほかない。昨年ブログに綴った通りだ。

世界を変えていくことができるのは、僕たちしかいないのだ。

そういった当事者意識を、何人が、どこまで持てるか。僕たちはそういう戦いをしている。

シンプルにいえば、今日をやり切る。

やはり、ここに立ち返るのだ。

最後に、会社のみんなへ。

耳タコだろうけど、何度でも言う。

もっと、もっと、Freakしようぜ。

絶対勝てるから。

Biz Freak 5期目、しっかりこの山に、向き合います。

3周年ブログはこちら。

https://bizfreak.co.jp/blog/eclcsolba

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