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外食産業の課題にAIで最適解を。サントリーとBiz Freakがタッグ を組んだ、その先に見える未来とは

外食産業の課題にAIで最適解を。サントリーとBiz Freakがタッグ を組んだ、その先に見える未来とは

サントリー株式会社

サントリー株式会社

首都圏営業本部 外食開発部 第5支店

得津 知速 様

日本最大の外食市場であり、トレンドの最前線でもある首都圏エリア。この激戦区において飲食店の開業出店や繁盛店づくりをサポートするのがサントリー首都圏営業本部の外食開発部です。当部署は日々さまざまな角度から飲食企業に向けてアプローチを実施。顧客ニーズを的確に掴む企画と地道な営業の掛け算でシェア拡大を目指しています。

Biz Freakではこの度、同社とタッグを組み、AIを活用した飲食店向けのシステムを構築中。その中で、今回はそのAIシステムを活用した顧客提案にて陣頭指揮を取られた得津様にお時間をいただき、取り組みを通じて得られた成果や今後AIが飲食業界にもたらす可能性についてお話いただきました。

「経験と勘」の継承を、AIで実現する

まずは得津さんの担当されているお仕事からお聞かせ願えますか?

得津:部署名にもありますように、首都圏エリアを中心に飲食事業を営む企業様に向けて開業支援から新規出店のお手伝い、その他あらゆる面で店舗のご繁盛をサポートする部門にて営業に携わっています。

今回、Biz Freakとタッグを組んだプロジェクトについて教えてください

得津:私が所属するチームはサントリーとまだお取引のない企業様との関係をゼロから構築することがメインのミッションです。その中でも最大の企業規模を誇る一社が、首都圏で多くの店舗を展開する某大手チェーンでした。

この企業様はサントリーの競合となる酒類メーカーと非常に強固な関係を築いておられ、業界では新規参入の余地はないと考えられていました。でもそれが逆にチームのマインドに火を点けたんですね。守りではなく攻めのスタンスで、という方針のもと、なんとか突破口を開こうと動きはじめたんです。

ーまさに難攻不落の城だったわけですね

得津:実はたった一人、その企業様の店舗開発部にサントリーと接点のある方がいたんです。そこを起点になんとか関係性を構築しようと私たちの情報網をフル活用して、新店舗に適した物件情報を提供するなど地道な活動を続けました。専任チームが設立されてから約半年。日々の努力がようやく報われるチャンスが訪れました。その方の計らいにより、会長との面談の機会を得るところまでたどり着いたのです。

ー一気に会長まで!?そこではどのような提案をなされたんですか?

得津:当然ながら単なる商品の提案では響かないと考えて「新業態をやりませんか?」と思い切った企画をご提案しました。するとこれがすごく面白い、と好反応をいただくことに。ここでしっかりと接点を育みつつ、並行して物件探しのサポートも継続した結果、サントリーの紹介物件初の店舗が2025年の夏にオープンする運びとなりました。

ーおめでとうございます!大きな一步ですね

得津:このようにして会長からの評価を獲得し少しずつ信頼関係を築いていく中で、同社が抱えるひとつの経営課題が見えてきました。それが新規出店のプロセスです。実は出店の可否は会長ご自身の長年培われてきた「経験と勘」で最終決定されていたんです。

これまではその手法で上手くいっていたのですが、今後の事業拡大や事業承継を考えると、この「感覚頼り」が将来的なリスクになりうると感じました。

ーそこでAIの活用を、という発想にたどり着くわけですね

得津:おっしゃる通りです。会長の卓越した感覚をデータ化し、後世に継承する仕組みとしてオリジナルの『月商予測AI』の開発を提案してみてはどうかと考えました。会長がお持ちの感覚値は同社にとってかけがえのない財産です。ここに数値的観点や既存店売上、ポテンシャルを含めたデータを掛け合わせることで間違いなく唯一無二のシステムが完成します。これであれば会長も気持ちよく次世代へタスキを繋げるんじゃないか、と。この構想を社内で話したところ、元サントリー社員であるBiz Freakの平さんを紹介されたのです。

構想を「勝てる戦略」へと昇華させる技術と知見

この話を最初に聞いたとき、平さんはどんな感触を得ましたか?

平:まずそもそも得津さんが熱量の高い方で(笑)好感を持って拝聴いたしました。もちろんお話自体も非常に面白いと感じました。私たちのAI技術にサントリーさんが持つ外食産業に関するナレッジ、さらに飲食店を展開する事業会社の情報を掛け合わせることができますよね。これは挑戦しがいのあるプロジェクトだと思い、ぜひご一緒させてくださいと即答したのを覚えています。

ー得津さんがBiz Freakと組もうとした決め手は何でしたか?

得津:平さんが元サントリーの営業だったことが大きいです。しかも私と同様、業務用の営業だったので共通認識も持てましたし、何しろ話がスムーズで。業務上、ほかの開発ベンダーと話をすることもありますが、平さんは私たちの状況や、このプロジェクトが単なるAI開発ではなくビジネス上の重要な一手であることまで深く理解してくれました。

平:得津さんの熱量に惹かれて、これはなんとしてでも成功させたいと強く思いましたね。

得津:おかげで我々の漠然としたアイデアが具体的で実現可能性の高い戦略へと昇華されました。会長にこの複雑な話をどう分かりやすく伝えるかというプレゼン資料の構成で悩んでいたのですが、そこも平さんに全面的にご支援いただき、想像を遥かに超えるクオリティのものに仕上がりました。あのときは本当に感動しましたね。

ーただ、出店の際に使う売上予測のシステムはすでに存在していますよね?

平:そうですね、世の中には地図データや人口統計を使った売上予測システムが既にあります。ただし精度が思ったよりも高くないものがほとんど。それは店の視認性や競合店の状況、店長のリーダーシップ、接客品質など、売上を左右するにも関わらずデータ化できていない「埋没変数」が多すぎるからなんです。だからこそサントリーさんのナレッジと飲食企業の現場のデータ、この両方を掛け合わせてAIを育てていく体制ができれば、本当に価値のあるシステムが作れると確信していました。

平さんにとっては母校ともいえるサントリーと組む仕事ですが、何か意識したことはありますか?

平:ここまで得津さんたちが温めてきた先方との関係値を壊さないためにも、出過ぎないように心がけました。一方でサントリー社内の仕事の進め方はしっかりと理解していたので、そのあたりはプロジェクトのみなさんにバリューを感じていただけたのではないかと自負しています。

一方で、Biz Freakがやっていることは新規事業開発やプロダクトの開発だけではありません。実際に市場に対してどうリレーションをとりながらサービスやプロダクトを溶け込ませていくかがゴールだと捉えています。その視点から「こうすればもっと良くなるのでは」といった提案は全体のビジネスを理解した上で積極的にさせていただきました。

得津:ディスカッションさせていただいていた中で平さんのキャッチアップ力、理解力の深さに何度も驚かされました。僕らが言いたいけど何と表現したらいいか戸惑っていたこともスパっと言語化してくださったり「そうそう、そういうこと!」と(笑)ハッとさせられる場面も多々ありました。

あと何より驚いたのはスピード感です。いわゆる“爆速”でプロジェクトを推進してくださいました。その点にも感謝しかないですね。

プロジェクトを通じて得られた大きな収穫

実際に先方へのプレゼンを実施した時の手応えはいかがでしたか?

得津:非常に好感触でしたね。そんなことができるのか?という驚きと、もし実現できれば会社の財産になるという大きな期待を持って受け止めていただけたと感じています。商談の場には会長、社長に加えて店舗開発部長も同席されていました。発言力をお持ちの方だったのですが、店舗開発目線から企画を後押ししてくださいました。

ではスムーズに承認されたわけですね!

得津:提案自体は高く評価され、会長から社長へ「これはやったほうがいい」と進言までしていただけたのですが…社内での検討の結果、一旦ペンディングという運びになりました。プロジェクト自体がステイという状態になっています。

なんと…そこまで上手くいっていたのに…

得津:成約に至るまではいくつかの大きな壁がありました。たとえばカルチャーの壁です。創業以来、長年にわたって成功を収めてきた企業にとって、AIという新しい技術は大幅に飛躍した提案と捉えられても仕方ありません。馴染みもなければ知見もない分野に一気に投資することへの慎重な考えがあったのだと思います。

また経営トップ間でも考え方に若干の温度差があったことも事実。このあたり我々も一定の理解はできるもののラストワンマイル、力が及びませんでした。

平:本当に残念でした。飲食店の生命線、めちゃくちゃ重要なKPIである出店戦略にこの体制でAIが介在できれば、人間の代わりとまではいわないまでも判断や意思決定を強力に支援できるようになります。それだけの価値があると確信していただけに、悔しい思いは拭えません。ただ、ここで終わりにするのではなく、企画そのものは育て続けていこうと。

ー今回の経験が次に繋がる学びになった、と

得津:そうですね、今回のプロジェクトは一旦ステイとなってしまいましたが、ここまでのプロセスで得られた知見はサントリーにとって大きな収穫だったと思います。

飲食業界は最先端技術にあまり馴染みがないと思われがちですが、10年後、20年後はAIがいま以上に生活に溶け込んでいることでしょう。そうなれば業界の人たちもAIの存在を無視できなくなるはず。サントリーとしてはその時に価値を存分に発揮できるよう、先鞭をつけていきたいと考えています。

平:私の古巣だから言うわけではありませんが、サントリーの商材やサービスは実際にいちばんお店が儲かる構造になっているんです。お客様に喜んでいただきながらお店にもしっかりと利益が残る提案ができる企業だと、在籍していた時から思っていました。他のメーカーなら自社の商品をいかに売るかというプロダクト軸になるんですが、サントリーの提案は総合的にそのお店がより長く繁栄するためのものなんです。

さっき得津さんが飲食業界は1步も2歩も遅れているとおっしゃいました。サントリーはそれを挽回するアプローチが取りやすい立場ですし、外食産業を前に進める責務も背負っている企業なので、今後ともタッグを組ませていただきたいと思っています。

AIが明るく照らす、飲食業界の新たな可能性

ー出店以外にもAIが介入すべき課題はたくさんありそうですね

得津:人の問題が考えられますね。飲食業界は離職率の高さが大きな課題です。その前に採用難という問題も抱えています。せっかく採用できたのに数年、場合によっては数ヶ月で辞めてしまう。それが原因で閉店や倒産というケースも過去にないほど増えています。採用と定着にAIが貢献できる余地は大きいと感じています。

平:非常に面白いテーマですね。別業界の話になってしまい恐縮なのですが、面接時のデータと入社後のデータをAIで繋ぎ、定着率を上げる取り組みを始めています。社員が増えても一人ひとりに寄り添う経営をデータで支援する。これは飲食業界にも応用できるはずです。他にも人事評価や食材の流通最適化など、課題が多いからこそAIが活躍できる場面は無数にあると思います。

得津:評価も大事ですよね。私の感覚値では20店舗を超えてくると制度もそれなりに整ってくるのですが、実は大多数の飲食店が3~5店舗という規模感です。個人事業主の範疇ですから社長の属人性に委ねられますし、マニュアルも確立されていないことも多い。

20店舗を超えている飲食企業も決して完璧ではなく、機能不全を起こしているケースが散見されます。いまの若い子は選択肢が増えていくばかりなので、ずっと飲食店で働いてもらおうとするならば教育や評価にもメスをいれないといけないですよね。ここに仕組みとしてAIが入りこんでくれば飲食企業としてはかなりありがたいはずです。

AIによって飲食で働く人の幸せも増やせそうですね

得津:おっしゃる通りです。たとえば今回のプロジェクトであてはめると出店計画を支援するAIが導入されれば店舗開発担当者は単純作業から解放されます。それによって生まれたリソースで不動産業者との関係構築といった、より付加価値の高い業務に時間を使えるようになる。AIは人の仕事を奪うのではなく、仕事の質を高めるためにあるものですから。

平:人がバリューを発揮すべきところにもっと時間を割いてほしいですね。負荷が減れば人の提供価値の出す場所も変わるし、飲食業界における働き方そのものが変わる可能性だってある。AIは標準化はできても人と人との関わりあいから生まれる感情や信頼関係までは代替できません。どこまでいっても最後は人であることは不変でしょう。だからこそもっと積極的にAIの導入に動くべきだと思っているのです。

今後Biz Freakと組むとしたらどんなことをやりたいですか?

得津:今回は物件に関することでしたが、これからはちょっとした現場でのチャンスの芽を見つけたら平さんに壁打ちさせていただきたいですね。平さんだからビールメーカーの私たちが「それそれ!」と唸るような返しをしてくれるだろう、とみんな期待しています。

また、個人的には海外に興味があって、向こうはおそらく日本以上にAIに関して理解があるはず。言葉の壁を超えさえすれば、AIの取り組みは国境を超えられるのではないかという期待もあります。平さんとのタッグなら形にできそうな予感しかありません。

平:ぜひ、ご一緒させてください。特に海外に関しては(笑)。ーシンプルに、というのは当初からの設計思想でしたか?

平:実装内容や仕様は割と複雑ですが、ユーザーへのUXに関してはいかにシンプルに仕上げるかにこだわりました。ユーザーが訪れたときに「いいね」となる設計は結構難しいんです。でもそこは評価いただけるものになったと自負しています。

最後に、得津さんから見てBiz Freakはどのような企業におすすめできますか?

得津:デジタル化に前向きな飲食企業であれば親和性は高いと思います。最近だとタッチパネルやモバイルオーダーなどに対応しているチェーン店も増えていますよね。そういった企業であればファーストステップはクリアできるんじゃないでしょうか。

あとは飲食業界に特化したテック系企業とBiz Freakさんが絡むのも面白いかも。付加価値の面で想像を超えるケミストリーが生まれそうな気がします。もちろんサントリーとも引き続き長いお付き合いをお願いします。

平:ありがとうございます。ビジネスは仮説検証のサイクルをいかに速く回せるかが重要だと思っていて。その点、私たちの“爆速”な開発スピードは必ずお役に立てると自負しています。サントリーさんと一緒に仕掛けていきたいアイデアはまだまだたくさんありますので、ぜひまたご一緒したいです。

ひとつの挑戦が未来への多くの可能性につながっていることを感じました。本日はありがとうございました!

▼『サントリーホールディングス株式会社』
https://www.suntory.co.jp/


  • インタビュー実施日: 2025年6月10日
  • インタビュアー: 早川 博通
  • 編集: 早川 博通
  • 写真: 小野 千明

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