圧倒的なスピード感ときめ細かなアップデートで、初の社内公募による新規事業立ち上げを推進
三菱地所リアルエステートサービス株式会社
三菱地所リアルエステートサービス株式会社
流通事業グループ
流通業務部 事業開発室長
石川 雅也 様
三菱地所グループの一員として不動産に関するサービスを扱う三菱地所リアルエステートサービス株式会社。同社ではグループのブランド力や全国に広がる既存事業のネットワーク基盤に甘んじることなく、社内に新規事業提案制度を整備。社員から広くビジネスの種を募っています。
BizFreakではこの社内公募第一号として承認された新規事業をシステム面からサポート。爆速開発とリリース後のきめ細かなアップデートで顧客満足を獲得しています。今回は新規事業開発室長の石川様にマイクを向け、BizFreakとのプロジェクトで印象に残るエピソードを語っていただきました。
投資をもっと即時的、網羅的、効果的に
ー今回の新規事業について概要を教えていただけますか?
石川:当社は不動産会社として事業用不動産売買仲介をメインに不動産関連サービスを主に法人向けに提供しています。今回の新規事業はその中でも投資用不動産を扱う領域。当社の投資家様に向けてこれまで以上に即時的に、網羅的に、そして効果的に情報をご提供する仕組みはないか、というところから生まれたものです。
ー従来はどういった情報提供が一般的だったんですか?
石川:2つあります。ひとつは営業社員が資料を手持ちで投資家様を訪問するスタイル。そしてもうひとつはメールでのご案内ですね。以前はFAXもありましたが、手法としてすっかり衰退してしまいました。
ところがこの方法は営業の属人性が高すぎるというネックがあります。仮に私がAさんの担当だとすると、私がAさんのご要望を聞いて、咀嚼して、厳選した物件をご紹介することになります。でも実は私以外の営業が紹介する物件のほうがAさんに気に入っていただける可能性も大いにあるんですよ。
平:営業社員の資質で大きく差が出てきそうですね。
石川:そうなんです。非常に属人的で、若手とベテランの間でも差異が出てくる。そんなことをやっているうちに他社にお客様を取られてしまいかねません。そういった環境下で、お客様自身も気づいていないようなニーズを発見して、より良い物件をお選びいただく。投資の体験価値をもっとなめらかにするシステムを作りたかったんです。
ー社内公募によって立ち上がったプロジェクトだと聞きました
石川:実は初の社内公募だったんですよ。それまでは社内にそういう仕組みはなかったのですが、既存事業だけではビジネスが先細りする可能性もありますし、若手を含む現場社員にも新しいアイデアをどんどん求めていこうという動きが生まれまして。そこに私が応募させて頂きました。
ー以前から温めていたアイデアだったんですか?
石川:効率化を図る動き、特にDXの波は不動産業界にも訪れるだろうと感じていました。既にいくつかサービスとしても出てきています。ただ、その中で法人に特化したものはなかった。だからこそ弊社で一からつくりたいと思ったんです。
公募に応募してから社内精査に一年かけ、検証段階に入ったところで事業開発室をつくり、実現できる手段を探してベンダーさんの選定に入りました。
ーそのタイミングでBiz Freakを知ったわけですね
石川:そうです。何社か候補がありましたが、Biz Freakさんは弊社で先行して動いていた『TAQSIE(以下タクシエ)』というサービスでの実績をお持ちでした。そこからの推薦という形で候補入りしたんです。『タクシエ』で上手くいってるからBiz Freakも入れてみたらどうだ、と。
ー『タクシエ』のお墨付きだったと
石川:僕は当初、実績があるから組もうという意識はあまり持っていませんでした。逆に『タクシエ』でBiz Freakの良さはわかってるんだから、もっと別の会社の実力を試したほうがいいんじゃないかと思っていたんですね。
それでそれぞれのベンダーさんと初回の顔合わせをはじめるのですが、どの会社さんもまずはWeb打ち合わせで、とおっしゃる。僕はビジネスパートナーとは直接お会いしてしっかり話をしたいタイプだったので、ちょっとだけ違和感を覚えました。
ー初回の顔合わせはオンラインが常識になりつつありますね
石川:提案書を見せてもらうところぐらいまではオンラインで、みたいな感じでした。その中で平さんだけが唯一「会いましょう」と言ってくれた。Biz Freakも初回はリモートでしたよ。でも少し話してすぐに会おうと意思表示してくれたのは平さんだけでした。
実際にお会いしてFace to Faceでフィーリングをつかむ。雰囲気みたいなものって意外と大事なんですよね。それでBiz Freakが一気に第一候補にあがった。
ー実際に会ってみてどんな印象をお持ちになりましたか?
石川:ガッチリとした体格のスポーツマンですよね。あと若いなとも思いました。その反面、話してみると落ち着いているし、喋り方も実に丁寧。僕はITの知識が皆無に等しかったんだけど、ホワイトボードを使ってわかりやすく丁寧に教えてくださいました。
少ないマンパワー予算、そして時間
ーBiz Freak側はどんな印象でしたか?
平:会っていただけたのは嬉しかったですね。大手の場合、僕らから会わせてほしいと言ってもNGというケースもありますからね。いつも言っていることですがアジャイルって“One Team”であることが全てですから、石川さんのような「一緒にディスカッションしよう」というスタンスは大変ありがたかったです。
ー立ち上げ当初のプロジェクトの課題はどんなものでしたか?
石川:新規事業ですから圧倒的に少ないマンパワーと予算、そして短い期間で成果を上げるということが命題でした。その中で僕が特に重視したのは期間です。新しいことをやりますと宣言したのはいいけど、いつまで経っても足踏みというのは避けたかった。
ースピード感重視だったんですね
石川:システムはどうしても僕の専門外なので、正直ベンダーさん任せになってしまう部分が多くなるわけで。専門的な言葉を並べて開発が遅れる理由を言われても僕にはわかりません。そうなることはできる限り避けたかった。だから圧倒的に期間を重視したんです。
そんな最優先事項に応えてくれそうなのがBiz Freakでした。なんといっても「爆速」というじゃないですか。この単語に惹かれましたね(笑)。しかもなぜ速いかについてもわかりやすく説明してくれました。ノーコードかつアジャイルで、つくりながらどんどんPDCAを回すから速いんです、と。
ー速さはBiz Freakの最も得意とするところですよね
平:新規事業においてスピードは絶対に外せない最重要ファクターです。その土俵であれば絶対に負けない自信がありました。そこはしっかりと伝えさせていただきましたね。
それともうひとつ、当時石川さんがユーザーに対してリアルタイムで情報を届けたいと言っていたんですが、この要素だけを考えると新規事業に慣れていないベンダーの場合、ネイティブアプリをつくりがちなんです。
ー普通はそうだと思いますが…
平:ネイティブアプリだと改修速度がかなり遅くなるんです。ベンダーによっては他社よりも速いとアピールするところがあるかもしれませんが、僕らからすると致命的に遅い。それよりもスピードを落とさずにリアルタイムで情報共有する方法を考えたとき、最善の技術が見つかった。それをご提案させていただいたんです。
ー具体的にはなんという技術ですか?
平:PWA(プログレッシブウェブアプリケーション)です。WebアプリですがPCだけでなくスマホにもダウンロードできて、ホームから飛ぶこともプッシュ通知もできる。ネイティブの場合、iOSとAndroidの2種類を作る必要があります。クロスプラットフォームの言語もありますが結局2つ存在することには変わりません。それぞれアプリ申請に時間がかかるわけで、やっぱり遅いんです。しかも一度分けると改修もそれぞれでやらないといけない。ある程度統合しても最終的には分けることになってしまいます。
石川:PWAを当初から提案いただいていたこともBiz Freakに決めた大きな理由のひとつですね。ブラウザとアプリのいいとこ取りができるのか、と驚きましたから。
ー新規事業支援に精通するBiz Freakならではの提案ですね
石川:もしネイティブアプリで作っていたら、と思うとゾッとします。作ったはいいが今度は使う側に問題が発生するから。弊社のお客様は結構規模の大きな企業が多いんです。そうすると会社の規則上、アプリを入れるにも稟議が必要になる。これ、かなりのハードルだと思います。おそらくそこがネックで行き詰まったはず。せっかく長い時間とお金をかけてつくったのに無駄になるところでしたよ。
平:最初からそうなんですが、石川さんは僕らからの提案に必ず耳を傾けてくださるので、とてもやりやすいんです。決めた仕様しか認めないという進め方だと、その先のグロース時につまづくことだってあると思うんですね。でも石川さんはきちんと意見を取り入れながらワンチームを作ってくださる。これならバリューが出せるなと確信しましたね。
石川:いまこのシステムを使ってくださっているお客様にアンケートを取りはじめているところなんですが、かなり使い勝手がいいという声が多いです。ストレスなくすぐにログインできて、サクサク検索できると。PWAで進めてもらって本当によかったです。
あと、いまにして思うと『タクシエ』での実績があることもプラスでしたね。弊社の気質もわかってもらえているし、共通する部分での知見も活かしてもらえているし。これが全くはじめての座組みだとしたら一から説明する必要がありますから。
あらかじめ認識のズレを前提に織り込む
ー実際にプロジェクトが進む中で感じたBiz Freakの特徴は?
石川:我々の意見をしっかりと汲み取って討論してくださる点です。思い描いているところの意図を汲み取った上で最適解を提案してくれる。プロジェクトが走りはじめの頃は平さんがつきっきりで、僕がエクセルで書いたつたない設計図を見事なシステムの基盤へと昇華してくれましたよね。
ー認識も目線もバッチリ揃った状態で開発が進んだと
石川:もちろん意図が一発で100%反映されるわけではありません。でもここはちょっと違うと返してからの改修がとにかく速い。おそらくですが他のベンダーさんだと要件定義も打ち合わせにも時間をかけて、認識相違ない状態で作る。それでも違うとなると、あと1ヶ月かかります、ということになると思うんですよね。それでは困るんです。
ー開発期間はどれぐらいかかったんですか?
石川:プロジェクト開始からリリースまで3ヶ月でしたね。その間は結構みっちりやりとりしていました。
平:最初のうちは週2でやりとりしていました。石川さんは石川さんで整理することがあって、打ち合わせの中では結構口頭で進んでいたところもありました。
僕らは3ヶ月あったらその期間の全てを使って開発するのではなく、2ヶ月ちょっとで作るんです。残りはバグの回収や認識のズレを埋めるためにとっておく。他社よりもリーンにしています。
ーなぜそこまで早くできるんですか?
平:フレームワークやエンジニアの技術もありますが、一番の要因はある程度の認識のズレを前提として開発を進めているから。だからズレが発生してもイレギュラーではなく、あくまで既定路線と理解してガンガン改修していくんですね。
石川:Biz Freakのスタイルは僕らにもすごくフィットしています。4ヶ月かけて100%に持っていくよりも、70%でいいから3ヶ月でアウトプットしてほしい。僕が頭の中で描いているものをいきなり完璧に形にはできない。それよりも3ヶ月で70%の状態のものをリリースして、残りの30%は1ヶ月かけてああでもない、こうでもないと作り込んでいくほうがいいんです。
平:とはいえなんでもかんでも拙速に、ではなく、たとえばデータベースの構成といった大事な部分に関してはしっかりとディスカッションして詰めました。このシステムでゆくゆくはどういうところまで目指すのか。プロダクトとしてマーケットにリリースする可能性はあるのか。エリアをどこまで拡大するか。このあたりでデータベースやサーバの仕組みも変わってきますからね。
ーリリースから半年ほど経っていますが、改修はまだ続く感じですか
石川:少し落ち着いてはきましたが、リリース後から繰り返しアップデートをかけてきました。さっきアンケートの話をしましたが実際に使う人からはすごくサクサク動くし、何よりシンプルでわかりやすい、使いやすいと好評です。
平:新規事業をシンプルにするのって、逆に難しいんですよね。
石川:確かに、あれもこれもとやりたくなってしまいますからね。
ーシンプルに、というのは当初からの設計思想でしたか?
平:実装内容や仕様は割と複雑ですが、ユーザーへのUXに関してはいかにシンプルに仕上げるかにこだわりました。ユーザーが訪れたときに「いいね」となる設計は結構難しいんです。でもそこは評価いただけるものになったと自負しています。
ー石川さんから見ても満足の行く仕上がり?
石川:もちろんです。アップデートの面から見てもシンプルは是だと思っています。お客様から見て使いづらいというのでは改修も難しいはず。そぎ落とせばいいのか、改変すべきなのか判断もつきにくいですから。それよりもシンプルな形でスタートして、ニーズに応じて改修を重ねていくほうが最終的にもいいものになると思います。
あっているかどうかよりお客様がどう感じるか
ー開発チームも投資物件など不動産の知見が必要なのでは?
平:まだまだ業界のメインストリームをいく方々に比べれば解像度は荒いのですが、それでもエンジニア同士で自分が買うならこの市場はどうなんだろうとか、買う時は借り入れだから金利はどうなっている、といった会話が交わされるようになっています。ここは会社としてかなり体制化が進んだなと思っています。
石川:逆にこちらも当初まったく持ち得ていなかったITに関する知見を授けてもらいました。お互いにないものを補い合えている関係性だと思います。
たぶん最初の頃って僕も無茶振りしていたと思うんですよ。これぐらいできるでしょ、とか。でも開発に関する理解が進むと、この依頼はたぶん平さんの表情を曇らせるだろうな、とわかってくるんですよね(笑)。
平:お気遣いいただきありがとうございます。
石川:いや本当にBiz Freakじゃなかったらできなかったと思うし、早々と撤退になっていたかも知れません。相当モタついて、なおかつゴールできない可能性もあったでしょう。
ーBiz Freakと組んでから石川さんが得られた気づきは他にも?
石川:入社してから一貫して営業畑を歩んできたのに、いままで関わったことのない業界の方や、知識技術を持った方たちから常に刺激をいただいて。ITスキルなんてゼロでしたし、日々勉強ですよ。本当に楽しくやらせていただいています。
しかも平さんやBiz Freakのみなさんの考え方、捉え方は営業にも活かせるんですよね。構想の建て方も参考になるし、ロジックに関する発見や収穫もたくさんある。このプロジェクトをより大きな成功へと持っていき、再び営業現場に戻ったとき、自分がものすごくパワーアップしているんじゃないかと期待しています。
ーBiz Freak側も気付きや成長ポイントが多かったようですね
平:基本的には新規事業をやるときにはシステムベンダーや元エンジニアを連れてくるケースが多いんですが、僕としてはそのどちらでもない石川さんと組んで上手く回せているこの状態はあらためて僕らが会社としてどうあるべきかを考える機会になっています。
ベンダーは得てして知識や専門用語を並べてマウントをとりがち。既成事実をつくってこっちはあってます、と抵抗するんですね。でも大事なのはあっているかあっていないかではなくて、お客様がどう感じているか。そこに立ち返ることができたのは石川さんとのやりとりのおかげですし、会社としてもまたひとつ成長できたと感謝しています。
石川:そりゃそうですよね、ITの知識がまったくない人間にわかるように説明するわけですから(笑)
平:本当に石川さんは虚心坦懐になんでも聞いてくださるので助かっています。
ーひと言でBiz Freakのどこを推しますか?
石川:それはもう、平さんです。フランクであり理路整然としている。パッションもあるし、付き合いもいい。漠然と起業したのではなく、ビジョンを持ってきちんとプロセスを踏んでいる起業家だと思います。
今回のようなシステム関係の新規事業ってイレギュラーが多いと思うんです。やたらバグが発生して、エンドユーザーにも迷惑をおかけしてしまいがち。でも平さんなら信頼できる。しっかり責任を持ってやってくれるだろうと思えるんですよね。もちろんBiz Freakのメンバーも優秀な方ばかりなんですが、束ねているのはやはり平さんかと。
平:ありがとうございます。恐縮です。
ー今後のBiz Freakに期待することは?
石川:バクソクボードのリリースに期待しています。当初提案を受けたとき、PWAだったりバブルを使ったアジャイルだったり、どれも素晴らしいと思ったんですが特に惹かれたのがバクソクボードでした。
バクソクボードがあればあらゆることが数値化・可視化できる。その上でスタックしているボトルネックの改善にも踏み込めるし、PDCAも回せる。最初にお話を聞いた瞬間にこれいいですね、と食いついたのを覚えています。
平:KPIツリーにしてどこがボトルネックか、逆にどこがケイパビリティなのかが見える戦略アプリケーションです。
石川:バクソクボードを介してまたBiz Freakさんとタッグを組んで新しいことができることに期待しています。一日も早いリリースを心からお待ちしています。
ーありがとうございました!
▼『三菱地所リアルエステートサービス株式会社』
- インタビュー実施日: 2024年10月21日
- インタビュアー: 早川 博通
- 編集: 早川 博通
- 写真: 小野 千明