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属人化した匠の技をAIへ。西松建設とBiz Freakが挑戦した、建設業界アップデートの舞台裏

属人化した匠の技をAIへ。西松建設とBiz Freakが挑戦した、建設業界アップデートの舞台裏

西松建設株式会社

西松建設株式会社

関東建築支社 建築企画部長

梶原 利文 様

建設業の採算を左右する重要工程でありながら、膨大な時間と専門知識を要する「積算」業務。大手ゼネコンの西松建設株式会社では、この伝統的な業務フローにもAIを取り入れ、抜本的な効率化を目指すDXに挑戦しています。

Biz Freakはこの度、同社とタッグを組み、AIを活用した積算システムをわずか3ヶ月で構築しました。今回は、プロジェクトを牽引した西松建設の梶原氏とBiz Freakの長谷川氏に、短期間で実用化を実現した背景や、AIが建設業界にもたらす可能性についてお話を伺いました。

「魅力あるナンバーワン」を目指して。伝統と革新が交差する西松建設の想い

── 西松建設といえば大手ゼネコンとして有名ですが、改めて現在の事業の強みや特徴を教えてください。

梶原:もともとは土木の会社としてスタートしているのですが、実はいま、大きく成長しているのは建築部門です。年間の受注額でも既に建築が土木を上回っています。この追い風に乗ってさらに伸ばしていこうと狙っていますが、しかしそれは単なる規模の拡大ではありません。現在、当社の代表が掲げているのは「魅力あるナンバーワンの会社になる」という目標です。

── 「魅力あるナンバーワン」ですか。非常に印象的な言葉です。

梶原:各部署でその実現に向けたスキームを練っています。具体的には、人々の心に残るシンボリックな建物を造ること。それは大きなオフィスビルに限らず、小ぶりでもパッと目を引くような、印象に残る仕事をしていきたい。そして、そこで働く人たちのエンゲージメントを高めること。これらが相乗効果を生んで、お客様にさらなる価値を提案できる。そんな「良い渦」をステークホルダー全員で作り出そうとしています。

── 昨今の資材高騰や社会情勢の変化も、その「魅力」への挑戦に影響していますか?

梶原:非常に大きな影響があります。戦争や物流の混乱で、単にコストが上がるだけでなく、物自体が入ってこない。ユニットバスや接着剤など、メーカー側で製造がストップしたり、通常の3割程度の供給能力になったりする局面もありました。

── 工期の維持も死活問題になりますね。

梶原:その通りです。だからこそ、お客様との対話が重要になります。「ここは譲れないけれど、ここは別の提案で妥協点を見つけましょう」といった真摯で誠実なやり取り。単に「物がないから無理です」と諦めるのではなく、ウィンウィンの関係を築くための提案が、いまの時代には不可欠です。これらを成立させる人間力こそが、次も西松建設に任せようと思っていただける優位性になると信じています。

── そのような「攻め」の姿勢の中で、Biz Freakさんとの出会いがあったわけですね。

梶原:きっかけは、弊社の関東建築支社のトップと、Biz Freakさんのパートナーの方が知り合いだったことです。「AIを扱っている面白い会社がある」という話からスタートしました。

── 最初の打ち合わせはどのような雰囲気だったのでしょうか。

Biz Freak 長谷川(以下、長谷川):最初は西松建設様の安全部署や工事部、企画部など、多くの部署の方々が集まってくださいましたね。我々としては「AIで解決できることは多岐にわたる」ということをお伝えし、まずは現場で何に困っているのか、アイデアの素となる課題を出し合うところから始まりました。

梶原:正直なところ、最初は「よくあるITベンチャーの売り込みかな」という冷めた目もありました。でも、長谷川さんたちのお話を聴いているうちに「何でもできそうな雰囲気」が伝わってきた。特に私が共感したのは、彼らのスタンスです。

── スタンス、と言いますと?

梶原:これは個人的かつ勝手なイメージで恐縮なのですが、ITベンチャーの方々というのは効率至上主義といいますか、利益の最大化を第一義にされているのでは?という先入観があったんです。もちろん利益追求の重要性は理解した上で、です。

でも、Biz Freakさんは違った。プレゼンの場で「僕たちが欲しいのはお金じゃないんです。世の中を良くしたい、強い日本を作りたいんです」と熱く、大真面目に語られた。自分たちが大手企業を辞めてまでこの会社を立ち上げた理由がそこにある、と。

その青臭いほどの熱意と誠実さに、この人たちなら信頼できる、一緒に面白いことができるはずだと直感したんです。

── それで、梶原さんが手を挙げられたと。

梶原:ええ。複数の部署から膨大なアイデアが出ましたが、私が一番“声が大きかった”のかもしれません(笑)。「これ、俺のところでやります」と。そこから、建設業界の難所である積算のプロジェクトが動き出したんです。

「2週間」を「その場」で。積算業務のブラックボックスに挑む

── 今回のプロジェクトの核心である積算について教えてください。

梶原:建設における積算とは、平たく言えば見積もりです。この土地に、この広さで、何階建ての建物を造るなら、いくらかかるのか。現状、この回答を出すまでに通常1週間から2週間、場合によっては3週間近くかかります。

── それほどまでに時間がかかるのはなぜですか。

梶原:変数が多すぎるからです。敷地の形状、用途、構造、設備、仕上げのグレード……。営業担当がお客様から条件を伺い、社内の積算担当に持ち帰り、一つひとつの要素をはじき出す。積算担当もそれだけをやっているわけではないので、どうしても待ち時間が発生します。

── 2週間待たされると、お客様の熱も冷めてしまうかもしれません。

梶原:そこなんです。もしお客様と対面しているその場でパソコンに条件を打ち込んで「概算でこれくらいです」と提示できれば、商談のスピードは劇的に上がります。「それならこの土地を買おう」といった意思決定も早まる。これが他社に対する圧倒的な優位性になります。

── 非常に難易度の高い領域だと伺いましたが、Biz Freakさんとしてはどう感じましたか。

長谷川:正直に申し上げて、積算は最も難易度が高い領域の一つです。単なる計算ロジックだけでなく、そこには熟練者の「味付け」や「判断」という、属人的な要素が多分に含まれているからです。

── 属人的な要素、ですか。

長谷川:過去の膨大な見積もりデータがあっても、それが常に「正解」とは限りません。当時の社会情勢や担当者のさじ加減で数値は変動します。我々ITの人間からすると、建築の専門知識をキャッチアップしながら、その曖昧なロジックをいかにシステムに落とし込むかが大きな壁でした。

梶原:最初は私も「AIならデータを渡せば勝手に学習して、魔法のように答えを出してくれる」と思っていました。でも実際はそうではなかった。精度の高い答えを出すためには、こちら側の“交通整理”が不可欠だったんです。

── 具体的な開発の進め方はどのようなものだったのでしょうか。


長谷川:Biz Freakが掲げる「爆速開発」を体現するため、まずは最初の1ヶ月で動くプロトタイプをお見せしました。ラフなデザインで、計算ロジックを確認するための剥き出しの状態です。そこから梶原さんにフィードバックをいただき、修正してまた見せる。このサイクルを極限まで速く回しました。

梶原:実際、あのスピード感には驚きましたね。普通なら要件定義だけで数ヶ月かかるところを、いきなり動くものが出てくる。それを見て「あ、ここが違う」「ここをこうしたい」と具体的に議論ができた。正直、プロジェクトが走り出したばかりの頃は半年から1年かけてなんとか形になれば、と思っていたので、一気に信頼度も増しました。

──他のプロジェクトに比べて、対面の打ち合わせも多かったそうですね。

長谷川:はい。おそらく過去のプロジェクトと比較して多くのお時間をいただいたと思います。Web会議はもちろん何度もオフィスに足を運び、梶原さんの頭の中にあるロジックを言語化し、設備担当の方のノウハウを吸い上げる。システムを作るというより、いわば西松建設様の知見を抽出する作業でした。

梶原:「コンパクトオフィス」という、私たちが得意とする建物のタイプに絞ってスタートしたのも正解でした。ターゲットを明確にすることで、AIに学習させるデータの精度を高めることができたんです。

── 3ヶ月という短期間で形になった秘訣はどこにあると思われますか。

梶原:Biz Freakさんの圧倒的な作業量と、それに応えるこちらのコミットメント。どちらか一方が折れたら終わっていました。彼らは損得勘定を抜きにして、私たちのこだわりにとことん付き合ってくれた。

長谷川:梶原さんが強力なリーダーシップで、社内のキーマンを次々と巻き込んでくださったのが大きかったです。我々がいくら技術を持っていても、現場の強力なプッシュがなければ、大企業の壁は越えられません。まさに当事者意識の共鳴があったからこそ、3ヶ月での完成という不可能が可能になったのだと感じています。

AIの限界を知り、人の知恵で補正する。高精度への執念

── 開発プロセスにおいて、特に苦労した「最大の山場」はどこでしたか。

梶原:実勢価格との乖離ですね。10年前のデータで学習させても、いまの単価とは全く合いません。ここ数年の資材高騰は異常ですから。AIに過去の傾向を読み取らせることはできても、「いま、この瞬間の接着剤の価格がどうなっているか」まではAIだけでは判断できません。

── そこをどう乗り越えたのでしょうか。

梶原:AIが出した数字に対し、人間の力で「いまの状況ならこれくらいの補正が必要だ」という味付けを加える。AIにすべてを任せるのではなく、AIが得意な部分と人間が判断すべき部分を明確に分けることに気づいたのが転換点でした。

── 現場でもAIに対する解像度が上がったわけですね。

梶原:そうです。当初は魔法の杖を求めていましたが、実際はAIは「精巧な道具」なんです。使い手が賢くならなければ、良い結果は出ない。この気づきは、私個人にとっても、西松建設という組織にとっても非常に大きな収穫でした。

長谷川:システム的にも、精度を70%、80%まで上げるのは比較的スムーズでしたが、そこからさらに精度を挙げていく作業は、まさに産みの苦しみでした。チューニングをかけても、思うような数値が出ないこともある。その度に梶原さんと膝を突き合わせて「なぜこの差が出るのか」を検証し続けました。

── 技術的な限界を、対話の頻度で埋めていった。

長谷川:まさにおっしゃる通りですね。AIの限界は日々アップデートされますが、現時点での最適解を見つけるには、泥臭いコミュニケーションしかありません。またシステムを作るだけでなく、使ってもらうための調整も大変でした。

── 社内での反応はいかがでしたか。

長谷川:当然ですが「自分たちの仕事が奪われるのではないか」という懸念を持つ方もいらっしゃいました。そのため梶原さんに場をセットしていただき、数十人規模の説明会を実施しました。

梶原:私は部下たちに言いました。「これはみんなの仕事を奪うものではない。営業が持ってくる『ちょっとこれ概算ではじいてよ』という細かい雑務を減らし、より精度の高い、本来やるべき高度な積算に集中するためのツールなんだよ」と。

── 現場の負荷を減らすための、強力な味方だと。

梶原:そうです。営業にとっても、その場でお客様に数字を出せる武器になる。積算担当にとっても、一次回答の手間が省ける。誰も不幸にならない、全員がメリットを感じられる形を目指しているという合意形成を得ることに心を砕きました。

── 途中で本社のDX部門からも声がかかったと伺いました。

長谷川:はい。DX部門の方々から「本当にできるのか」と問われたこともありました。しかし梶原さんが開発プロセスや技術構成などを丁寧に説明してくださり、ご納得いただけることに。最終的にはDX部門のみなさんも協力者としてプロジェクト推進の大きな力となってくださいました。

梶原:周りが何を言おうと、現場で本当に使えるものを作っているという自負がありましたから。結果としてプロトタイプが動き出したときには、懐疑的だった人たちも「これはすごい」と目の色を変えました。

── 精度向上のために、今後も継続的なメンテナンスが必要になりますか。

長谷川:もちろんです。市場価格は常に変動しますし、新しい工法も出てくる。今回構築した仕組みは、一度作って終わりではなく、使いながら育てていくものです。そのための基盤が、この3ヶ月で強固に出来上がったと自負しています。

梶原:次は「物流倉庫」のAX(AI Transformation )にも挑戦したいと考えています。物流倉庫は西松建設の大きな強みである領域です。今回学んだAI活用のコツを活かせば、さらに精度の高い、かつ現場に即したシステムが作れる確信があります。

「信じられるパートナー」と共に。建設DXが切り拓く新しい日本の未来

── 今回のプロジェクトを振り返り、あらためて「成功要因」を挙げるとすれば何でしょうか。

長谷川:スタンスの相性の良さに尽きると思います。我々のような「アジャイル開発」を標榜するベンチャーと、西松建設様のような「まずやってみる、失敗を恐れない」というチャレンジ精神を持つ大企業。この組み合わせが最高にマッチしました。

梶原:私も同感です。どちらかが「言われたことだけやる」受け身の姿勢だったら、この成果は得られませんでした。Biz Freakさんは私たちの思いを汲み取り、常に期待以上のスピードで返してくれた。そこに嘘や隠し事がなく、誠実だった。弊社の社是に「勇気、礼儀、正義」があるのですが、この社是に対してBiz Freakさんの考え方が上手く合っていたことも成功要因のひとつといえるでしょう。

── 「誠実さ」というキーワードが、梶原さんから何度も出てきますね。

梶原:ITの世界は専門用語も多く、私たちからするとブラックボックスになりがちです。でも長谷川さんたちは、できないことはできない、ここまではできると常にオープンに、実に正直に話してくれた。また追加費用を要求するようなこともなく、ゴールに向かって一緒に走ってくれた。その誠意があったから、私も社内で彼らを全力でバックアップできたんです。

── 長谷川さんから見て、梶原さんというリーダーの凄みはどこにありましたか。

長谷川:圧倒的な当事者意識と、周囲を巻き込むエネルギーです。大企業のDXが停滞する最大の要因は、推進者の「やらされ感」にあることが多いのですが、梶原さんは誰よりもプロジェクトを楽しんでいらした。あのワクワク感がチーム全体に伝播し、困難な局面を突破する原動力になったと思います。

── 西松建設という組織自体も、非常に柔軟なカルチャーをお持ちですね。

梶原:弊社の社長は「失敗してもいいから、とにかくやれ」というスタンスなんです。若い人たちにも、守りに入るのではなくどんどんチャレンジしてほしいと考えている。今回のプロジェクトは、まさにその姿勢を体現する一つのモデルケースになったと思います。

── Biz Freakをおすすめするとしたら、どのような悩みを抱える企業に?

梶原:人手不足や生産性の向上に、本気で危機感を感じている会社ですね。ただツールを導入するのではなく、自社の業務を根本から見直し、本気で変革したいと考えているなら、Biz Freakさんは最高のパートナーになります。「お金が先」ではなく「志が先」の彼らなら、どんな難題にも真摯に向き合ってくれるはずです。

── 今後の両社の展望について、教えてください。

長谷川:積算システムの横展開はもちろんですが、西松建設様と共に、建設業界全体のDXを牽引するようなソリューションを開発していきたいですね。ソフトウェアの力で日本の「ものづくり」を支えていきたいという思いはあります。

梶原:まさに「ものづくり」というキーワードが今回のプロジェクトの最大の推進力になったと思います。これからも期待しています。そしてBiz Freakさんは間違いなくこれから大きく成長されていくと思いますが、どうかいまの「世の中を良くしたい」というピュアなマインドだけは忘れないでください。根っこの部分は変わらず、どこまでも拡大してほしいですね。

── 最後に、梶原さんからBiz Freakへメッセージをお願いします。

梶原:今回は「コンパクトオフィス」という分野で素晴らしい成果が出ました。でも、これはまだ始まりに過ぎません。これからも共に悩み、共に汗をかき、建設業界を驚かせるような仕掛けを一緒に作っていきましょう。弊社のサスティナビリティスローガンである「みんなでつくる、みんなで輝く」を高いレベルで具現化できるのはBiz Freakの「爆速開発」と、西松建設の「提案力」にほかなりません。この掛け算なら、日本の未来はもっと明るくなると信じています。

長谷川:ありがとうございます。初心を忘れず、全力で伴走し続けます。



  • インタビュー実施日: 2026年5月13日
  • インタビュアー: 早川 博通
  • 編集: 早川 博通
  • 写真: 小野 千明

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