「判断」だけを返すAPIが続々登場。OpenAI Decisions API・Jev・Microsoft・Perplexity を比べてみた
2026年10月22日、OpenAI の Decisions API が正式公開(GA)されました。文章を生成するのではなく、「Yes の確率は何%か」「どの選択肢か」「何点か」といった判断結果だけを高速・安価に返す API です。
実はこの秋、同じタイプの API が TypeSafe(Jev)、Microsoft、Perplexity からも相次いで出ています。「結局どれが安いの?」「何に使えるの?」が気になったので、料金と機能を比べ、具体的な使い道まで考えてみました。
💡この記事のポイント
- OpenAI Decisions API は正式公開後も単価据え置き(入力 $0.10/100万トークン、出力無料)。代わりにキャッシュが入り、共通部分は10分の1に
- 単価だけなら Perplexity($0.02)が最安。OpenAI は単価では他社の2.4〜5倍だが、キャッシュを活かせば他社並みまで下がる
- 「大量データの全件検索」には向かない。「候補を絞った後の判定・並べ替え」で本領を発揮
- 画像も判定できるので、「この車はあの人の好みか?」のようなアプリも作れそう
※ 料金・仕様は2026年10月23日時点の情報です。各社とも変更が多いので、利用前に公式ページを確認してください。
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そもそも「判断特化API」とは?
普段使っている ChatGPT などの生成AIは、質問に対して文章で答えます。一方、アプリの中では「この問い合わせは請求関係?」「この投稿は規約違反?」のように、文章はいらないけど判断だけ欲しい場面がたくさんあります。
判断特化APIは、まさにそこを狙った API です。入力(テキストや画像)と「質問」を渡すと、次の3種類の形で答えが返ってきます。各社ほぼ共通です。
質問の種類 | 返ってくるもの | 例 |
|---|---|---|
Yes/No | 条件を満たす確率(0〜1) | 「このメールはクレームか」→ 0.87 |
選択 | 選んだ選択肢+各選択肢の確率 | 「問い合わせの種類は?」→ 請求(72%) |
採点 | 2〜10段階の評価 | 「緊急度は5段階でいくつ?」→ 3.8 |
どの社も課金されるのは入力だけで、出力は無料です。その代わり文章は一切書かないので、「なぜそう判断したか」を説明させることはできません。
OpenAI Decisions API は正式公開で何が変わった?
OpenAI の Decisions API は、短期間で正式公開まで進みました。
日付 | 出来事 |
|---|---|
2026/9/29 | DevDay で限定プレビュー |
2026/10/6 | パブリックベータ |
2026/10/22 | 正式公開(GA) |
公開当初から「競合の Jev に比べて高い」と言われていましたが、正式公開でも単価は据え置きでした。
ただし、正式公開でキャッシュが入ったことで、実際に払う金額は大きく変わる可能性があります。毎回同じ内容(指示文や参考データなど)を先頭に置く使い方なら、その部分は $0.01 と通常の10分の1になるからです。
入力のうちキャッシュが効く割合ごとの実質単価を計算すると、次のようになります。
キャッシュが効く割合 | 実質単価(100万トークンあたり) | 比べると |
|---|---|---|
0% | $0.100 | Jev・Microsoft の約2.4倍 |
50% | $0.055 | まだ Jev・Microsoft より高い |
65% | 約 $0.042 | Jev・Microsoft と同じくらい |
75% | 約 $0.033 | Jev・Microsoft より安い |
90% | 約 $0.019 | Perplexity($0.02)とほぼ同じ |
たとえば、後で紹介する「車の写真の判定」のように、毎回共通の前置きが3,000トークン、毎回変わる写真と質問が1,000トークンなら、キャッシュが効く割合は75%です。この場合、OpenAI の実質単価は Jev・Microsoft を下回ります。
注意点もあります。
- キャッシュの書き込みは別途課金されるので、同じ前置きを何度も使い回すほど得になります
- 共通部分が1,024トークン未満だとキャッシュは効きません
- 今回調べた範囲では、他の3社にキャッシュ割引があるかは確認できませんでした
「単価表だけ見ると高いが、使い方次第では最安クラスまで下がる」というのが、OpenAI の料金の実態です。
料金(モデル:gpt-6-luna)
- 入力:$0.10/100万トークン(ベータと同じ)
- キャッシュ済みの入力:$0.01/100万トークン(正式公開で新設。共通部分が1,024トークン以上のときに適用)
- キャッシュの書き込み:別途課金
- 出力:無料
- 割増:長い入力(ベータ時の説明では272Kトークン超で全体2倍)、地域を指定した処理(+10%)
正式公開で追加されたこと
- 1回に投げられる質問が 200 → 最大400 に
- プロンプトキャッシュに対応
- JSON をそのまま入力できるように
- 質問ごとに画像を添付できるように(参照画像との比較など)
- 音声モデル GPT-Live と直結
- データの保管地域を US/EU から選べる、データを保持しない設定(ZDR)、HIPAA に対応
4社を比べてみる
単価はいずれも入力100万トークンあたりで、出力はどこも無料です。
項目 | OpenAI Decisions API | Jev 1.14(TypeSafe) | Microsoft-Decision-1 | Perplexity Decisions API |
|---|---|---|---|---|
状況 | 正式公開(10/22) | プレビュー(10/14) | 正式公開(10/9、Foundry) | 提供中(v1:10/1、v1.1:10月) |
入力単価 | $0.10(キャッシュ $0.01) | $0.042 | $0.042 | $0.02 |
モデル | gpt-6-luna | 独自(非公開) | Qwen3.5-9B を追加学習 | pplx-decider-v1.1-27b(Apache 2.0 で重み公開) |
画像 | ○(質問ごとにも添付可) | △ 試験提供 | ×(テキストのみ) | ○(PNG/JPEG/WebP) |
質問の種類 | 3種 | 3種+位置特定(Box) | 3種 | 3種 |
1回の質問数 | 最大400 | 公開情報なし | 公開情報なし | 最大128 |
入力できる量 | 公式記載なし(OpenRouter では 1.05M) | 64K(長文モードで 262K) | 32K | 262K |
その他 | 保管地域の選択・ZDR・HIPAA、GPT-Live 連携 | 長文モードは遅く精度も下がる | SDK なし、制限の多くが非公開 | 秒間10リクエストまで |
どれを選ぶべき?
- とにかく安く → Perplexity。$0.04 から $0.02 に値下げし、現状の最安値です。モデルの重みも公開されているので、自前の GPU で動かすこともできます
- 画像を本番で使いたい → OpenAI か Perplexity
- データの扱いを重視 → 保管地域・ZDR・HIPAA がきちんと文書化されているのは OpenAI だけです
- 精度 → 正直、まだ判断がつきません。Artificial Analysis の指標では Microsoft 53.8、OpenAI 48.5、Perplexity は13モデル中6位。一方で Jev 系の指標では Perplexity が1位と、評価する場所によって順位がばらばらです。自分のデータで試すのが一番確実です
なお、Cloudflare も同じ時期に「Clef」という同種の API を出したようです(今回は未調査)。
Jev の画像入力について
Jev 1.14 でも画像に対して Yes/No・選択・採点の判定はできます。ただし今のところは「お試し」の扱いです。
- 専用ヘッダ
TypeSafe-Danger-Zone-Images: trueが必要。提供元自身が本番利用を勧めていません - 提供元は「画像はテキストより性能が落ちる」とし、質問を単純に分けるよう推奨しています
- PNG/JPEG のみ(スマホの HEIC は変換が必要)。1辺 280〜1,568px で、範囲外の画像が1枚でもあるとリクエスト全体が失敗します
- 写真の向き情報(EXIF)は反映されないので、送る前に回転しておく必要があります
- 位置特定(Box)は対象が写っていなくても座標を返すため、Yes/No の質問と組み合わせて使います
試作で比べるには十分ですが、本番なら OpenAI か Perplexity が安心です。
使い道①:大量の商品から「好みに合うもの」を選ぶ
ここからは、実際にどう使えるかを考えてみます。まずは「DB に登録された大量の商品から、ユーザーの好みに合うものを選ぶ」ケースです。
結論:全件検索ではなく「絞った後」に使う
残念ながら、DB 全体から探す用途では、ベクトル検索など従来の方法より速くはなりません。
- 1回に投げられる量に上限がある(OpenAI は最大400問、Perplexity は最大128問)
- 1回あたり数百ミリ秒かかる(OpenAI のデモで約150ms、Microsoft は自社計測85ms/第三者計測459ms)。ベクトル検索や SQL なら数ミリ秒です
一方で、候補を数十〜数百件に絞った後の「好みに合うか」の判定に使うと、生成AIに順位を付けさせるより速くて安くなります。
おすすめの組み合わせ
- 候補を絞る(数ミリ秒):SQL の条件(在庫・価格帯・カテゴリ)とベクトル検索で上位100〜400件に
- Decisions API で判定(数百ミリ秒):ユーザーの好みや購入履歴を共通部分に置き、候補ごとに「このユーザーは商品Xを気に入りそうか」を Yes/No で聞く
- 並べ替える:確率の高い順に表示
400件の判定は1回の呼び出しでOK
「候補ごとに聞く」といっても、候補の数だけ API を呼ぶ必要はありません。候補1件につき質問を1つ立て、最大400件を1回のリクエストにまとめられます。
部分 | 中身 |
|---|---|
入力(input) | ユーザーの好み・購入履歴(全質問で共通) |
質問1〜N(最大400) | 「商品X(名称・説明)をこのユーザーは気に入りそうか」(Yes/No) |
ちょっとしたコツもあります。
- 400件を超えるときは、リクエストを分けて並列に送れば OK
- キャッシュが効くのは入力の共通部分だけで、質問の文は対象外です。商品の説明は短くまとめると安く速くなります
- 「全候補を選択肢に並べて一番を選ばせる」より、Yes/No を候補の数だけ並べる方がおすすめです。並び順の影響を受けにくく、全件に確率が付きます
- 400問を入れたときに時間がどれだけ伸びるかは公開されていないので、100・200・400件と変えて実測するのがおすすめです
従来の方法と比べると
比較相手 | Decisions API を加えると |
|---|---|
ベクトル検索だけ | 速さでは負けます。その代わり「辛いものは苦手」のような否定や条件付きの好みを反映でき、精度が上がる見込みです |
生成AIに順位を付けさせる | 文章を生成しない分、速くて安い。結果が確率で返るので扱いやすい。一番おいしい置き換えです |
並べ替え専用モデル(Cohere Rerank など) | 速さは同じくらいか、やや不利かもしれません。判定の基準を自由に書けて、商品画像も材料にできるのが強みです |
費用の目安は、OpenAI で候補400件 × 各100トークン(約4万トークン)とすると、1回あたり約 $0.004(約0.6円)。Perplexity ならその約5分の1です。
使い道②:車の写真から「Aさん好みかどうか」を判定する
もうひとつ、画像を使う例です。「車の写真を撮ると、ある人(Aさん)の好みの車かどうかを教えてくれるアプリ」を作るとしたら、どう組めるでしょうか。
全体の流れ
- Aさんの好みを「前置き」として用意する
- ユーザーが撮った車の写真を送る
- 「好みに合うか」と、その理由になる要素をまとめて聞く
- 確率がしきい値(たとえば 0.7)以上なら「Aさん好み」と表示する
Aさんの好みの伝え方
- 文章で:「SUVやクロカン系が好き」「90年代の角ばったデザインが好き」「派手な色やスポーツカーは苦手」など
- 画像で:好きな車・苦手な車の写真を数枚ずつ。言葉にしにくい「雰囲気」は、画像で見せた方が伝わりやすいです
📝「前置き」ってつまりプロンプト?
はい。毎回同じ内容を先頭に置くプロンプト(指示文)のことです。Decisions API のリクエストは次のように分かれています。
部分
中身
毎回同じ?
入力(input)の前半
Aさんの好みの説明文+参考画像
同じ → キャッシュが効く
入力(input)の後半
今回判定する車の写真
毎回違う
質問(questions)
「Aさんの好みに合うか」など
同じでもOK
- キャッシュは先頭から一致している部分にだけ効きます。共通部分を先に、毎回変わる写真を後ろに置きましょう
- 共通部分は1,024トークン以上必要です(質問の文は数に入りません)
- モデルに学習させるわけではなく、毎回リクエストに含めて送ります。差し替えればすぐに改善を試せるのが利点で、毎回かかる入力料金はキャッシュで約10分の1にできます
質問の組み立て(すべて1回のリクエストで)
質問 | 種類 | 返ってくるもの | 使い道 |
|---|---|---|---|
この車はAさんの好みに合うか | Yes/No | 確率 0〜1 | 判定の本体 |
どれくらい気に入りそうか(5段階) | 採点 | 平均点と各段階の確率 | 「かなり好き」「まあまあ」の表示 |
車のタイプは?(SUV/セダン/スポーツ/軽…) | 選択 | 選択肢と確率 | 理由の表示 |
角ばったデザインか | Yes/No | 確率 | 理由の表示 |
派手な色か | Yes/No | 確率 | 理由の表示 |
参考画像「好きな車①」と同じ系統か(画像を添付) | Yes/No | 確率 | 似ている車の紹介 |
Decisions API は理由を文章で説明してくれないので、理由になりそうな要素を細かい質問に分けて聞くのがコツです。結果を組み合わせれば、アプリでは「好み度82%:SUV/角ばったデザイン/落ち着いた色 → Aさん好み」のように見せられます。
精度を上げるには
- Aさんに車の写真100〜200枚を「好き/苦手」で仕分けてもらい、正解データを作る
- その正解データで、F値が一番高くなるしきい値を選ぶ(再現率と適合率もあわせて確認)
- 外れた写真を見て、好みの文章や参考画像を足す。学習は不要で、前置きを書き換えるだけで改善できます
コストと速さ
- 1回あたり数千トークンで、0.1円未満の見込みです
- 応答は数百ミリ秒程度の見込み。「撮ってすぐ結果が出る」体験にはなりそうですが、画像サイズ次第なので実測がおすすめです
気をつけたいこと
- 画像は Base64 か公開 URL で送ります(OpenAI の場合、file_id は使えません)。スマホの写真は先に縮小しておくと速く安くなります
- ナンバープレートや人が写り込むことがあります。一般公開するアプリなら、データを保持しない設定(ZDR)や、事前にぼかしを入れることも検討しましょう
- 「同じ車種でも色で好みが変わる」ような細かい好みは、参考画像の数と質で精度が大きく変わります
- 同じ構成は Perplexity でも組めます(単価は5分の1)。Jev も画像を扱えますが試験提供なので、比較用にとどめるのが無難です。Microsoft は画像に非対応です
試すときのポイント
- まずは小さく比べる:正解付きのデータは20〜30件でも十分です。OpenAI・Perplexity・Jev を同じ質問の組み立てで比べると、差が見えやすくなります
- 「動く」と「使える」は別物:API を呼べば結果は必ず返ってきます。画面などを作り込む前に、正解データで精度を測っておくのがおすすめです。正解データは、作る人の感覚ではなく、実際の利用者や過去のデータから作りましょう
- 質問数と時間の関係は実測する:大量の質問を入れたときの所要時間は公開されていません
- 料金は利用前に再確認:今月だけでも値下げや仕様変更がありました
- データの扱いを確認:個人の好みや写真を扱うなら、保管地域(OpenAI は US/EU から選択、日本は未確認)やデータ保持の設定も確認しておきましょう
まとめ
判断特化APIは、「文章はいらないけど判断だけ欲しい」という場面で、生成AIより速く安く使える新しい選択肢です。
- 単価は Perplexity が最安、データの扱いや機能の豊富さは OpenAI
- 大量データの全件検索ではなく、絞り込んだ後の判定・並べ替えで力を発揮
- 画像も判定できるので、好みの判定のような「その人らしさ」を扱うアプリにも使えそう
各社ともまだ登場したばかりで、精度の評価も定まっていません。気になった方は、手元のデータ数十件で試してみると、自分の用途に合うかがすぐに分かるはずです。
参考
- OpenAI Community: Decisions API is now generally available
- OpenAI Docs: Decisions
- Crypto Briefing: OpenAI Decisions API GA
- WebProNews: Decisions API GA
- SmartScope: Decisions API beta pricing & vs Jev
- ai-tldr: Jev 1.14
- SmartScope: Jev Image Input Guide
- remio: Jev 1.14 expands what Jev can see
- systemonemodels: Microsoft-Decision-1 vs OpenAI
- OpenRouter: Microsoft-Decision-1
- systemonemodels: pplx-decider
- X: AGTP on Perplexity Decisions API


